今週の心の童話

ジョイ猫物語 第二章(9)

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その時、ジョイが傍にいる事に気がつきもせずに炎をみつめていたラファエルが突然、バケツを持ってうろうろしている一人の男性に向かって走り出した。彼は、バケツに体当たりし水を浴びる。
水浴びの好きなラファエルの行動に慣れているジョイだがまさか?その後、彼が燃える炎を怖れずに家の中に突っ走るとは、予想だにしなかった。
すぐ後を追いかけるジョイは、火を恐れる心は制したものの、余りの熱さと体の毛が焦げる匂いに屈して途中で引き返す。
ラファエルの姿は、全く見えなくなった。余りの突然の状況にジョイは我を忘れて、
「ニャーゴー!ニャーゴー!」」
と鳴き叫ぶ。
だがジョイの鳴き声は空しく、騒音にかき消されてしまう。
まるで赤い大きな生き物がラファエルを、舌ですくい呑み込んだかのようであった。
「ニャーゴー!ニャーゴー!」
哀しみを絞り出すように再び鳴くジョイの鳴き声を、あざ笑うかのように赤い生き物は膨れ上がる。
 なす術もなく、苦痛と哀しみに鳴き続けるジョイの隣に・・いつの間にか、身を寄せてきたのは、バルナバと大型犬ピースである。後から火事現場に着いた二匹の耳に入ってきたのは、
「猫が、火の中に飛び込んだぞー!」
と、いう叫び声である。同時に、消防車がようやく到着した。
 その瞬間、ピースが庭の池を目がけて猛スピードで駆け出し「ザブーン!」と飛び込む。
巨大な濡れ鼠になり、そのまま猛突進で燃える家の中へ駆け込んでいく。その敏捷(びんしょう)さは、大きな体にもかかわらず、周囲の人々の気が付くのを遅れさせる程であった。誰かがやっと気づいた。
「今度は、大きな犬が火の中に飛び込んだぞー!」
そう叫んだときには、消火開始がなされて水がホースから噴き出しはじめていた。ジョイとバルナバは、ただ祈るのみであった。
バルナバが何度も唱えるように繰り返す。
『「出て来い三匹!出て来るんだ〜三匹!さあ、今だ、出て来い!」』

■今週の童話 (更新曜日: 毎週火曜日 )■
開始年月日<2018/7/27>  現在<88>回目

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