今週の心の童話

ジョイ猫物語 第一章(10)

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 まだまだ小さかったジョイが、思わず入り込んだ塀の穴から、ピースの姿を見てぶるぶる!と、震えが止まらず、四肢が硬直してしまった。後ろから、追いかけて来たサムに抱えられなければ、小さな心臓は、その務めを無責任にも投げ出していたことだろう。
その時、サムが、
「形の大きさや外見だけで、人間や動物を推し量ってはならないのだよ」
と、ジョイに教えた。そして、数日後
「眼に見えるものの、もっと上を見てご覧!」
と、言って、隣家の庭に小さなジョイの体をさらして見守った。ピースは、ジョイにゆっくり近づいてきて温厚な話し振りで声をかけた。
『「やあ〜、きみがサム爺さんところのジョイだね。僕は、ピースだよ。思っていたより、ずいぶんと青くてきれいだね。近所の人たちが「セピアの館」を変更して「ブルーの館」とでも呼べばいいのにね。ウワハッハッハーワン!よろしくね」』。
友好的でユーモアに富むピースに心を奪われたジョイは、この日から憧れにも似た友情を、抱くようになったのだった。
 このピースと先日遊んだばかりだったが、今日もピースに会わずにいられない。ピースの方は昼寝を邪魔されても怒りもせず、白と茶色模様の大きな体を芝生からゆっくり起こしてジョイをみつめる。
器の大きな者の特徴は少々の邪魔や害悪には、動じないものだ。ピースは、まさにそんな犬である。ふっと笑みを浮かべながら、ジョイの首輪をまぶしそうに一瞥して
『「おー、ジョイ!サッカーをやろうか。今日は負けないぞ」』
と、元気な声で迎える。
二匹はボールを追いかけて庭を駆け巡り、色とりどりのポーチュラカの鉢の一つを倒しそうになる程、遊びに没頭する。
本当に楽しい午後だった。心地よい夏風を全身に受けて、ジョイは若い正義の心で自らを説得した。
『掟の第一番目を破ったけれど・・・』。
体に土埃をつけて戻ったジョイを、サムは微笑んで迎え、優しく体を洗いブラッシングする。

■今週の童話 (更新曜日: 毎週火曜日 )■
開始年月日<2018/7/27>  現在<34>回目

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