今週の心の童話

ジョイ猫物語 第一章(12)

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 三日後、緊急の集まりが開催される。出かけようとするジョイを、じっとみつめながらサムが語る。
「ジョイや。自己の弁護のあまり、自分が正しいと思うことを捨てると明日が辛くなるものじゃ。時として・・・沈黙は、お前の首輪の「金」と同じじゃよ」。
老人サムの百戦錬磨の推論から出た言葉だ。
近所の猫達の日常を眺めて、ジョイと比べれば容易に推察ができていた。長い間、生きてきたのだ。これくらいは、予知できて当然だった。しかし、サムの言葉は、不安と恐れに囚われて凍ったジョイの心に届かなかった。ジョイはぜんまい仕掛けのぬいぐるみのような体を引き摺り公園へ向かった。
三五匹の猫達は、まさに興奮状態だ。ジョイの裁判が始まる。一匹の黒猫が、ジョイが掟を破った瞬間を目撃したと証言する。
『「犬にしっぽを振って、遊んでいました」』
と 、大きな声で述べる。すると全員が
『「では、第一番目の掟を破ったのだ!」』
と、一斉に声を上げ始めた。別の猫も証言する。
『「わたしは、ネズミ六匹を見逃しにした、と聞きました」』。
すると、また全員が
『「では、第二番目の掟を破ったのだ!」』
と、叫ぶ。こうしてジョイの罪が明るみにされていった。リーダー猫たちが難しい顔をして、相談を始める。
猫達の裁判の間、被告のジョイは首輪の金の重さを意識しながら・・・一言も語らなかった。
彼は、不安と恐怖で溺れそうになりながら、記憶力の限界まで奮い立たせて「愛と勇気の話」を思い起こしていた。群集に無実の罪を裁かれながら、無言で人々の審判を受け入れた偉大な人の話を聞いたことがあった。サムの語る声をそのままに、自分の耳に響かせて、眼を閉じた。
『愛と勇気のあるその偉大な人は、無実なのに殺された。でも、僕はきっと・・・追放されて猫集団から排除されるだけなんだ』。
そう考えたら、ほんの少しだけブルーの毛を揺らしてくれる夏の夜風を心地良く感じた。、
追放、つまるところ仲間からは、同じ一匹の猫として扱われなくなり村八分になることだ。
そして、ジョイの嫌な予感は的中する。「追放」が、リーダー達を通しておもむろに宣言される。
その瞬間、光る星座のように全員の眼だけが輝いたが、重い静寂が集まりを襲う。ジョイは観念した。

■今週の童話 (更新曜日: 毎週火曜日 )■
開始年月日<2018/7/27>  現在<36>回目

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