Mrs.ポピーの童話〈バックナンバー〉
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   テーマ:ジョイ猫物語 第三章(12)

『信じて良かった。やはり信じることは幸運をもたらすのだ』
と、ジョイは自らの信念と経験を通して悟ったのだった。
一週間前の雪の日、バルナバの訪問を受けてラファのことを聞いた最初の驚きと戸惑いのひと時に、答えを自分なりに考えて見出した。雪を漠然と眺めて捕らえた白い小さな塊を、屈み込んで観察した結晶は一片ずつ全て違っていた。
それは、まるで友同士でも違っていて当たり前と教えているようだった。であれば・・・互いを細かに知りつくすなんて出来ないのと同じではないのか?だからこそ、「信じる心が大切なのだ!」と、ジョイの心は導かれた。
そして、あの部屋のシクラメンの花は、トラブルで生気を失ったとはいえ、やはり同じシクラメンだった。では、ラファにどんな過去や噂があっても、変わらずにラファなのだ。ラファが別な猫に変わるわけではない。だから友人の自分に出来ることは「ただ、友を信じきることだけ!」なのだと導かれた。
まだ若いジョイは、ジョイなりの観察と推論から教訓を汲み取った。将来、彼が自らを振り返ったときには、きっと自然界から読み取ったつもりの理屈に合わない論理を思い出し、赤面するであろう。だが、今のジョイにとっては最善の洞察力による結論に至って最良の結果を生んだのだ。
心が満たされたジョイは衝撃を受けたあの日を思い出しつつ、クリスマスが近づき活気付いた家並みを横切り、元気に「セピアの館」へと向かった。
 その頃、サムは暖炉の火を強めて部屋を暖め我が猫ジョイの帰りを『今か!』と待ち詫びていた。
戻ったジョイの明るく輝くグリーンの瞳を見たサムは、安堵(あんど)に包まれる。体中から嬉しそうにして、ジョイを抱き上げる。お蔭でジョイは砂マットで足を拭くこともせずに、ほかほかの暖炉にゆるりと置かれて座り込んだ。
『何と暖かいのだろう!』
ジョイはいつの間にか、ブルーの全身の力を抜きうたた寝をする。



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