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一 括 講 読

テーマ:ジョイ猫物語 第四章(3)
自分たち猫語の会話を理解できるというのか?いったいリズは何者なのだろう。リズの端正な横顔をみつめながら、その能力に初めて気付き慌てた。しかし、全てお見通しならば自分の今の驚きも気付かれるかもしれないと平静を装った。
婦人たちの会話は続いていく。
「リズの言う通りかもしれないわ。私、この町に来るまではアルトベイク市で暮らしていたの。両親は、私とモーリーの病気のために、引っ越したものだから・・。このモーリーには、そこに娘猫と母猫がいたの。珍しいキムリック種だから・・・もしかしたら、その二匹のどちらかと間違えたのかもしれないわね」
とメラニー。
ジョイは、また驚いた。このモーリーはラブの母猫そしてマリアの娘猫なのだ。あの猫社会の古い掟を破ったとして「追放」の刑を余儀なくされ、病に侵された猫。ジョイが見逃したネズミの親・・・あの時の母ネズミが話していた愛のある猫なのだ。
ただただ驚いているジョイに、妹アニーが嬉しそうに言い出す。
『「お兄様!このモーリーが私の尊敬する大切な年長の友人なのです。今度紹介するって話していた方なのよ」』
『「あ、あ、うん・・そうだったね。そうか、彼女だったんだね」』
ジョイはようやく落ち着きを取り戻した。
彼はあらためてモーリーに自己紹介して、妹アニーが世話になったことの感謝を述べる。その時のジョイは、兄としての威厳があった。モーリーは、マリアの娘猫らしく非常に聡明で、物分りが良く賢かった。なるほど彼女ならアニーを教えて成長させるに値するだろうとジョイは確信できた。
それにしても、モーリーをラブと勘違いし、感情を露(あらわ)にしてしまった自分について暖炉の火を眺めながら反省した。
『僕はどうして、あんなに取り乱したのだろうか?』ジョイは自分でも理解不能である。ラブからマリアへと回想しているうちに・・・突如、ジョイの眼が光り『そうだ!』と、ある閃きを得る。知るべき大切な事を思い出した。
ジョイが知りたかったこと、それは愛する者の「死」についてである。老猫マリアとはいつ会えるか、予想もつかなくなっていた。では、その前に
『マリアの娘であるモーリーなら、答えてくれるかもしれない』
と、ジョイは思った。
彼は、ゆったりと暖炉前でくつろいでアニーと何やら語り合っているモーリーに控えめに話し出す。



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