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一 括 講 読

テーマ:ジョイ猫物語 第三章(6)
サムは、猫が笑うなどと想像だにしない。二匹の発する奇妙な「ンーグ、ンーグ」と、言う声に関心を持ち、傍に寄って来て不思議そうに二匹を眺めた。
またしてもバルナバがサムへサテンのようなダークレッドの体を摺りつせて「ニャ〜!」と、小さく鳴き、玄関へ向かった。
そして、サムは最初以上に嬉しそうに肩をすくめながら、後を追いかけて扉を開けてあげる。ジョイは止みかけた雪空を斜めに見て、ほっとしてバルナバを見送る。冬の午後の出来事であった。
 雪はその後、降ったり晴れたりを繰り返していた。そして、一週間後の晴れた冬の朝空へ「ンーニャー!」の声が上がる。
一部の猫たちを集めるための『猫式連絡網』である。各縄張りから縄張りへと声が上がった。
ジョイは届いたその合図で、心配顔の飼い主を後にして、いつもの公園に出かける。昼近くであった。
地面は乾いているが、昨日までの残雪が道路脇に積もっている。秋までに軽やかに渡れた塀は所々が凍り付いていたので慎重に歩く。
公園の花壇には、クリスマス・ローズの花が赤・白・黄色・ピンクとランダムに植えられていた。冬空の下で華やかに目立っているにもかかわらず、慎み深そうに下向きに咲いていた。
公園の入り口付近で、到着を待っていたのは、老いたリーダー猫一匹である。彼が連絡網を通して、召集をかけたのだった。
寒そうにブルブルと震えながら、ジョイをにこやかに迎える。
『「もう少し待ってくれるかね、ジョイ。あと三匹が来る予定なのだよ」』
と、またブルブルッ!と黒っぽい老体を震わせた。
『「あ、来た来た。では、参ろうかね」』。
その言葉にジョイが振り向くと、現われたのは噂話の名人シャム種のパームと社交家スコティッシュフォールドのトミー、そして彼の友人の雄猫の三匹だった。
『「さあ、さあ、早くしてもらっていいかな」』
と、寒さに震える老猫が急かすので、既に他の猫達が集まっているベンチへと向かう。



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